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横浜地方裁判所 昭和23年(ヨ)49号 判決

主文

本件申請を却下する。

申請費用は債権者の負担とする。

事実

債権者代理人は、債務者等は債務者横須賀税務署長が、債権者に対してなした、昭和二十二年七月十七日附第一種増加所得金額九十九万円の決定に基く所得税金七十万五千円中七十万円の徴収手続、殊に同債務者が昭和二十三年二月二十日、差押えた債権者所有の神奈川縣三浦郡三崎町日の出東ノ町一〇番の一一地所在家屋番号七九の三木造瓦葺平家一棟建坪二十八坪五合七勺の公売手続は、債権者から、債務者等に対する右税金債務不存在確認請求訴訟の本案判決確定まで、之を行つてはならない。との判決を求めその理由として、債務者横須賀税務署長は、債権者に対し、昭和二十二年七月十八日附で第一種増加所得金額を九十九万円と決定した上、同月十九日頃第一種増加所得税金七十万五千円を同年八月十日までに納入すべき旨告知した。しかし債権者の昭和二十一年中の第一種所得金額は、合計二万三千百五十円に過ぎず、同債務者の賦課処分は確実な調査に基かず投書や密告を基礎にし、事実と相違した違法なものであつて、無効なものであるに拘らず、昭和二十三年二月二十日、七十万円の滯納ありとして請求の趣旨記載の家屋を差押えた。その家屋は、債権者の住居であり、且つ唯一の財産である。後日、前記賦課処分の無効が確認され、又は取消されても回復し得ない損害を受ける虞があるので本申請に及んだと述べた。

債務者等代理人は、主文同旨の判決を求め、本件は行政庁の処分に対し仮処分を求めるものであるから許さるべきでないと述べ、債権者の主張事実に対し債権者主張の処分をしたことは認めるが、債権者の増加所得金額が九十九万円であることは、確実な資料に基き算定し得るところであつて、賦課処分は何等違法ではないと主張し、債務者国の代理人は、本件仮処分申請の趣旨によれば、横須賀税務署長のみを相手方にすれば十分であり、国は本件仮処分の正当な当事者ではないと述べた。

理由

行政事件訴訟特例法第十條第七項によれば、行政庁の処分については、仮処分に関する民事訴訟法の規定は適用されないから行政庁である債務者横須賀税務署長の処分について、仮処分を求むる債権者の本件申請は、不適法であつて、却下を免れない。

よつて申請費用は、敗訴の債権者の負担とし、主文の通り判決する。

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